緩和ケア

【2021年最新 緩和医療】がん疼痛コントロールの実際

緩和医療といえば・・・麻薬(オピオイド)! と思い浮かぶ方が多いと思います。

緩和医療では他にも色々な薬が使われますが、やはり重要な「疼痛コントロール」ではオピオイド

がキードラッグとなります。

「麻薬処方箋の処方、調剤監査に不安・・・」「この患者さんにこの処方で合ってるのかな?」

と、医療従事者側もオピオイド使用に不安を持ってしまうことも少なからずあるかもしれません。

患者さんに安心して使用してもらうためにもしっかりと知識をつけていきましょう!

がん性疼痛とは?

痛みの性質

がん性疼痛の痛みの性質には大きく分けると3つの種類があります。

特徴治療
内臓痛
(34%)
ズーンとした痛み
(腹部腫瘍の痛みなど局在があいまい鈍い痛み
オピオイド
体性痛
(71%)
ズキッとした痛み
(骨転移など局在がハッキリした鋭い痛み
オピオイド
(レスキュー使用が重要)
NSAIDs
神経障害性疼痛
(39%)
ビリビリ/ジンジン/痺れる痛み
体性感覚神経・神経叢への浸潤による電気が走るような痛み
鎮痛補助薬
オピオイド

※内臓痛、体性痛を合わせて侵害受容性疼痛と言います。

それぞれ効きやすい薬は違いますが、やはり共通してオピオイドがキードラッグとなります。患者さんによって効くと感じる薬には個人差もあります。

痛みのパターン

痛みのパターンには2種類あります。

特徴治療
持続痛1日のうち12時間以上持続する痛みベース鎮痛薬
突出痛短時間で悪化し自然消失する一過性の痛みレスキュー鎮痛薬

突出痛について

突出痛は更に「予測できる突出痛」「予測できない突出痛」に分けられます。

予測できる突出痛とは意図的な体動に伴って生じる痛みのことです。例えば「ごはんを食べる時に痛い」「トイレに行く時に痛い」「放射線治療に行く時に痛い」など、”生活の中で必ず痛みを感じる場面がある”と訴える患者さんは多くいます。

このような場合には前もってレスキュー薬の予防投与を行うという対処ができます。経口投与では30~60分前、注射薬投与では5~15分前に投与を行いましょう。

それに対して予測できない突出痛とは意図的でない体動に伴って生じる痛み(咳、消化管の動き、ミオクローヌスなど)や誘因のない突出痛などの場合があります。痛みを感じればレスキュー薬を使用しましょう。

★オピオイド:ベース、レスキューのおさらい★

オピオイド薬には徐放性製剤(ベース薬)速放性製剤(レスキュー薬)があります。

上に書いたようにがん性疼痛には2パターンの痛みがあることから、それぞれに対応できるように製剤化されているということです。

レスキュー薬はベース薬の1/4~1/6量を1回分として投与を行い、基本的に1時間空ければ再度投与可能です。(※アブストラル舌下錠など例外もあります。)

基本的にベースとレスキューは同じ種類のオピオイドが使われることが多いです。(投与量の計算がしやすいため)しかし、例えばベース薬がフェントステープ(フェンタニル)の場合、オキノーム散(オキシコドン)など違う種類のレスキュー薬を使っても大丈夫です。

WHO方式がん疼痛治療法:2018年改訂版

世界でのがん疼痛治療の基本となっているのがWHO方式がん疼痛治療法ですね。

2018年、改訂がありましたが、その具体的な内容をまとめていきたいと思います。

鎮痛薬使用の5原則⇒1項目削除!

鎮痛薬使用の5原則とは、

  • 経口的に (by mouth)
  • 時刻を決めて規則正しく (by the clock)
  • 除痛ラダーにそって効力の順に (by the ladder)
  • 患者ごとの個別的な量で (for the individual)
  • その上で細かい配慮を (with attention to detail)

この5つでした。

しかし、2018年改訂では3つ目の除痛ラダーにそって効力の順に (by the ladder) が削除っています!

ここで「除痛ラダー」とは、WHOが提言している3段階除痛ラダーを指します。(下表参照)

分類薬剤
◎第1段階
非オピオイド鎮痛薬
アスピリン
アセトアミノフェン
イブプロフェン
ジクロフェナク
インドメタシン
◎第2段階
弱オピオイド
トラマドール
コデイン
アヘン末
◎第3段階
強オピオイド
オキシコドン
モルヒネ
ヒドロモルフォン
フェンタニル
ブプレノルフィン
ペチジン
メサドン※

今までは、「第1段階の非オピオイド鎮痛薬から開始⇒効かなければ第2段階の弱オピオイド⇒それでも効かなければ第3段階の強オピオイド」とエスカレーター方式でした。

しかし、強い疼痛を訴えている人にとっては第1段階のNSAIDsや第2段階のトラマドール等は効果がないことも多々ありました。

そこで、患者さんごとに合った薬を導入時から使うというエレベーター方式が現在の推奨となっています。(もちろんNSAIDsと強オピオイドなど、違う種類の薬を併用することは今でもOKです)

※メサドンは強オピオイドの中でも強いものであるため、他のオピオイドが無効な患者のみに使います。

オピオイドの種類

では、実際にがん性疼痛に使われているオピオイドの種類や使い分けについてまとめていきます。

※強オピオイドの中でもファーストチョイスになり得る5種類のオピオイドに絞ります。

モルヒネ

  • 徐放性製剤:MSコンチン錠、MSツアイスロンカプセル、モルペス細粒、パシーフカプセル
  • 速放性製剤:オプソ内服液、モルヒネ末・錠
  • 坐剤:アンペック坐剤(徐放性、速放性どちらとしても使用可能)
  • 注射:プレぺノン、モルヒネ塩酸塩、アンペック

呼吸困難改善に◎

腎機能障害がある患者さん⇒できれば他のオピオイドへ変更しましょう。(代謝物であるM6G、M3Gが蓄積することで有害事象:神経障害、せん妄、傾眠が出やすくなるため。)

*坐剤や内用液などがあり、嚥下が難しい患者さんに使いやすい

オキシコドン

  • 徐放性製剤:オキシコンチン錠
  • 速放性製剤:オキノーム散
  • 注射:オキファスト

腎機能低下患者にも使いやすい

(*呼吸器症状にもエビデンスが出てきている)

フェンタニル

  • 徐放性製剤:デュロテップ、ワンデュロ、フェントス(すべて貼付)
  • 速放性製剤:イーフェンバッカル錠、アブストラル舌下錠
  • 注射:フェンタニル

ファーストチョイスには基本的に適さない。 ※

⇒徐放性製剤は経口製剤がないため。

⇒血中濃度の立ち上がりが遅く、細かな用量調節が難しい。

理由のある患者ではファーストチョイスとして使用してもOK(経口摂取不可、腸管運動低下患者など)

便秘の副作用が出にくい。(オピオイドμ受容体への作用が弱いため)

速放性製剤の使い方が他のオピオイドと違って難しい

⇒用量調節期に増量していく・服用間隔は30分等、独自のルールがあり。(添付文書参照)

⇒他オピオイドの速放性製剤をレスキュー薬に用いてもOK(換算に注意しながら)

呼吸抑制リスクが高い。(モルヒネ、オキシコドンの2倍程度)

ヒドロモルフォン

  • 徐放性製剤:ナルサス錠
  • 速放性製剤:ナルラピド錠
  • 注射:ナルベイン

1日1回経口投与製剤であるため服用が簡便

*ナルサス錠2mg/日は徐放オピオイドの1日投与量で最も低用量であり初期導入に使用しやすい

(*呼吸器症状にもエビデンスが出てきている)

タペンタドール

  • 徐放性製剤:タペンタ錠

便秘の副作用が出にくい。(オピオイドμ受容体への作用が弱いため)

速放性製剤がないため、他のオピオイド薬をレスキューとして用いる。

(*神経障害性疼痛に効果あり:ノルアドレナリン再取り込み阻害作用あるため)

まとめ

がん性疼痛、オピオイド薬使用についての基本事項をまとめていきました。

現在のがん疼痛治療については「2020年版 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」に詳しく載っていますので、気になる方は覗いてみてください。

オピオイドには副作用対策(吐き気、便秘、眠気)、オピオイドローテーション等今回書ききれなかった事項については今後の記事でまとめていこうと思います。

<少しでもオピオイド処方に対する不安感や抵抗感が少なくなって患者さんにより良い治療・より良い説明ができることを望んでいます!>