抗腫瘍薬

食道がん*治療方法と化学療法のまとめ

今回は、食道がんの病態や治療についてまとめていきます。

(化学療法に重点を置くため、検査方法などは割愛させていただきます)

食道がん概要

日本人の食道がんは90%が扁平上皮癌であり、数%(2~3%)が腺癌です。(欧米では腺癌が50%ほど)

扁平上皮癌は喫煙飲酒がリスクファクターとなります。(男女比は男性の方が多い)

食道は3つの部位に分けられます。上から頸部食道胸部食道腹部食道です。(日本人では胸部食道がん患者が多い)

また、食道の組織は、内側から外側に向かって「粘膜(粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板)、粘膜下層、固有筋層、外膜、リンパ節」という名前がついています。がんは内側から外側へと浸潤していき、外側に達するほどがんのステージとしては高くなります。

食道がんは自覚症状が少ないため早期発見が困難であり、また肺や肝臓、リンパ節への転移が起こりやすいため、治療の難しいがんとなっています。

ステージ分類

TNM分類によりステージングを行います。(T=がんの壁深達度、N=リンパ節転移の有無、M=遠隔転移の有無)ステージ分類を行うことは治療方法の決定に欠かせません。

T:Tumor (がんの壁深達度)

食道がんは表面(食道の内側)からできますが、どこまで浸潤しているかによってT0〜T4に分類されます。

  • T0:原発巣としての癌腫を認めない
  • Tis:上皮内癌/高度異形成
  • T1:T1a癌腫が粘膜下層にとどまる病変
  • T2:癌腫が固有筋層に浸潤する病変
  • T3:癌腫が食道外膜に浸潤する病変
  • T4:癌腫が食道周囲臓器に浸潤する病変
  • T4a:胸膜、心膜、横隔膜に浸潤
  • T4b:大動脈、椎体、気管などに浸潤

図で表すと下のようになります。

Tisでの「異形成」とは、食道の粘膜が形態異常をきたしている状態です。軽度異形成、中等度異形成、高度異形成と3種類に分かれています。軽度〜中等度の形態異常だけだと食道がんとまでは言えませんが、高度異形成は食道がんと言えるくらい悪性度が高いものとなっています。

N:node(リンパ節)

リンパ節があるのかないのか、ある場合はどのくらいあるのかによってN1〜N3に分類されています。

  • N0:リンパ節転移を認めない
  • N1:1-2個の所属リンパ節転移を認める
  • N2:3-6個の所属リンパ節転移を認める
  • N3:7個以上のリンパ節転移を認める

M:metastasis(転移)

遠隔臓器への転移があるのかないのかによってM0、M1に分けられます。

  • M0:遠隔臓器転移を認めない
  • M1:遠隔臓器転移を認める

ステージング

以上のT、N、Mを組み合わせてステージ0〜Ⅳに分けられます。(下図参照)

治療方法

Stage0

Stage0は「がんが粘膜の中にとどまっている状態」を指します。

治療は、内視鏡的治療を行います。

※EMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)など

StageⅠ

StageⅠは「がんが粘膜下層にとどまっており、近くのリンパ節や臓器に転移していない状態」を指します。

StageⅠの治療方法は大きく分けて3種類あります。

内視鏡的治療浅いがんの場合(粘膜固有層にとどまっている場合)

また、以下の場合は一緒に化学放射線療法(CRT)も行います。

  • 深さが深い場合⇒予防的CRT 5-FU+CDDP+RT(41.4Gy) 2コース
  • 内視鏡的治療を行ったが遺残があった場合⇒根治的CRT 5-FU+CDDP+RT(60Gy) 2コース

※5-FU:フルオロウラシル、CDDP:シスプラチン、RT:放射線療法、Gy:グレイ(放射線線量の単位)

外科的手術:粘膜下層に達している場合(粘膜下層に達していると50%の割合で転移が起こるため)

化学放射線療法(CRT)耐術能のない患者さんや手術を拒否する患者さんである場合。

CRTでは5-FU+CDDP(シスプラチン)+RT(60Gy)レジメンを2コース行います。臨床試験:JCOG9708では完全奏効87.5%5年生存率75.5%極めて良好な結果を残しています。

また、手術を拒否した患者さんでは「CRTを先に行い、効果がなかった場合に後から手術をする」ということも可能です。(臨床試験:JCOG0502 では すぐ手術を行う VS CRT後に手術を行う で全生存期間は変わらないという結果が出ています。)

StageⅡ/Ⅲ

StageⅡは「がんが固有筋層に広がっているがリンパ節や他臓器に転移がない、もしくはがんが固有筋層に達していないがリンパ節転移がある状態」を指します。

StageⅢは「周辺の臓器に転移がある(ない場合もあり)状態」を指します。

Ⅱ、Ⅲの治療方法は大きく分けて2つです。

術前補助化学療法(NAC)+外科的手術

臨床試験:JCOG9907 では化学療法を手術の前と後のどちらに行うのが良いか比較していますが、術前のほうが良いという結果が出ています。この際に使うレジメンは5-FU+CDDP療法であり2コース行います。

化学放射線療法(CRT)耐術能がない患者さんや手術を拒否する患者さんの場合。

この場合の標準治療レジメンは同じく5-FU+CDDO+RT(60Gy)です。CRTでは3分の1の割合で治癒が期待できますが、NAC+手術に比べると成績は劣ります。この場合も2コース行います。

(近年の臨床試験:JCOG0909 のレジメン5-FU+CDDP+RT(50.4Gy)ではNAC+手術と変わらないという結果も出始めてきているが今の段階では標準治療とは言えない)

StageⅣ

StageⅣはⅣAとⅣBに分かれています。

StageⅣA

ⅣAは「少し離れたリンパ節に転移がある状態」を指します。

ⅣAの治療ではCRTを行います。

レジメンは今までと同じく、5-FU+CDDP+RT(50.4~60Gy)です。(2コース)

StageⅣB

ⅣBは「遠隔転移がある状態」を指します。

ⅣBでは根治的療法(手術やCRT)が適応とならないため、化学療法のみを行っていきます。

使用するレジメンは何種類かあります。どのレジメンをどの順番で行っていくのかを次の事項にまとめます。

StageⅣBの化学療法

1st:FP療法(5-FU+CDDP)

今まで出てきたレジメンから放射線療法を取り除いたレジメンとなります。遠隔転移のあるⅣBではこのレジメンを4~6コース繰り返し行います。

JCOG9507では完全奏効33%全生存期間6.6か月となっています。すごく効く、という訳ではないですが、現在の標準治療となっています。

また、シスプラチンはCcr50以下で減量、30以下では使用不可と腎機能低下患者には使いづらい薬であるため、シスプラチンをネダプラチンに変更して行うこともできます

新*2nd:Nivolumab

1次治療がPDとなった場合、またはFP療法が6コース終了した後に2次治療に移ります。

ニボルマブ(オプジーボ)が2020年2月に食道がんに使用できるレジメンとして承認されています

臨床試験:ATTRACTION-3ではニボルマブ療法の全生存期間は10.8ヶ月であり化学療法群の8.4ヶ月に比べて有意に延長が見られました。

また、化学療法群に比べて副作用発現も格段に少ないため使いやすい薬となっています。

※これは食道がんガイドラインにはまだ記載されていません。

3rd:タキサン系

次に使えるのはタキサン系の薬剤となります。2017年食道がんガイドラインで2次治療として位置づけられていましたが、現在免疫チェックポイント阻害薬の登場により実質的には3次治療となっています。

パクリタキセル(PTX)、ドセタキセル(DTX)のどちらでも使用することができます。(全生存期間はどちらの薬剤を使用してもあまり変わらない)

DTXとPTXの違いとしては以下のようなものがあります。

  • 投与間隔:PTXは1週間ごと、DTXは3週間ごと
  • エタノール含有:PTXは含有している、DTXは含有していない製剤もあり

新1st候補:DCF療法(DTX+CDDP+5-FU) 

現在まだ治験中でありきちんと適応は通っていませんが、DCF療法が1次治療候補として挙がっています。これは、現在1次治療となっているFP療法にドセタキセルを上乗せした3剤併用療法です。

完全奏効62%全生存期間11.1か月(臨床試験:JCOG0807)であり、FP療法よりも優れていることが分かります。また、FP療法は最大6コースまででしたが、DCF療法はシスプラチンを6コースまで行った後に5-FUとドセタキセルをPDまで行うことができます。

ただ、毒性が強いというデメリットもあるため、現在治験が進められているところです。(JCOG1314)

※食道がんガイドラインにはまだ記載されていません。

まとめ

*食道がんステージごとの治療方法まとめ*

  • Stage0:内視鏡的治療
  • StageⅠ:内視鏡的治療(CRT併用の場合も)/外科的手術/CRT
  • StageⅡ/Ⅲ:NAC+外科的手術/CRT
  • StageⅣA:CRT
  • StageⅣB:化学療法

上記CRTではFP+radレジメンを使用

*StageⅣB化学療法レジメンまとめ*

  • 1st:FP
  • 2nd:Nivo
  • 3rd:DTX/PTX
  • 番外編:DCF