抗腫瘍薬

*抗EGFR抗体*副作用の予防と対処法

抗EGFR抗体薬は殺細胞性抗がん薬の副作用(食欲不振・吐き気、骨髄抑制、脱毛など)は出にくいですが、その代わり特徴的な副作用が出るので注意が必要です。

今回は副作用の予防や対処法についてまとめていきます。

副作用のおさらい

まず、抗EGFR抗体薬の詳細は以下の記事でおさらいしましょう。

抗EGFR抗体薬(分子標的薬) 今回は分子標的薬のひとつ、抗EGFR抗体についてまとめていきます。 EGFRとは EGFR = Epidermal Gro...

抗EGFR抗体の副作用は、インフュージョンリアクション、皮膚障害、電解質異常、口内炎、間質性肺炎でしたね。

インフュージョンリアクション

頻度・時期

マウス/ヒトキメラ型抗体であるセツキシマブでは約20%、完全ヒト化抗体であるパニツムマブでは約3%です。

投与中〜投与1時間後で起こります。(投与回数は2回目以降でも起こることがあります)

症状

  • 軽度〜中等度 悪寒、発熱、浮動性めまい等
  • 重度 呼吸困難、低血圧、アナフィラキシー様症状、蕁麻疹、気管支痙攣、心停止等

予防法

セツキシマブ投与前は抗ヒスタミン薬やステロイド等のプレメディケーション(前投薬)をします。(パニツムマブでは前投薬を投与する必要はありません。)

実際のレジメン例は以下の通りです

内服レスタミンコーワ錠10mg          5錠
(アービタックス投与30分前までに投与)
注射Rp1生食250mL                 1本
ルートキープ用
Rp2生食50mL 1本
デキサート注6.6mg 2mL          1瓶
30分かけて点滴
Rp3生食250mL                 1本
アービタックス注射液 700mg
120分かけて投与
Rp4生食100mL

*初回は必ず120分投与、2回目以降は60分投与でOK

対処法

インフュージョンリアクションが起こってしまった場合には、起こった症状に対して治療を行なっていきます。(抗ヒスタミン薬、NSAIDs、麻薬性薬剤、静脈内輸液等)

皮膚障害

頻度・時期、症状

皮膚障害全体だと約80%で起こります。

皮膚障害はざ瘡様皮膚炎、皮膚乾燥、爪囲炎の3つがあり、それぞれ出やすい時期が異なっています。(下図参照)

ざ瘡様皮膚炎:1~4週ごろ、約70%(Grade3以上10.5%)

ニキビのような吹き出物ができること。

皮膚乾燥:4~5週ごろ、約20%(Grade3以上2.1%) 

皮膚の乾燥やひび割れ、かゆみ

爪囲炎:6~8週ごろ、約25%(Grade3以上 4.3%)          

爪のまわりの炎症

皮膚症状が現れやすい部位は、頭、胸、背中、上腕の外側、わき腹、手首、ふくらはぎなどです。

予防法

スキンケアをすることで予防を行います。3つのポイントがあります。

  1. 保清(皮膚を清潔に保つ)
  2. 保湿(皮膚に潤いを与える)
  3. 保護(刺激を避けて皮膚を守る)

抗EGFR抗体薬投与開始時に保湿剤を処方してもらい、1日2回は手足に塗るように指導しましょう。(クリーム剤でもローション剤でもOK) 処方薬に抵抗があるようであれば市販のハンドクリーム等でも大丈夫です。

また日常生活においても、体を洗うときは皮膚に刺激を与えず泡立てて洗ったり、熱過ぎない温度で洗ったり、しめつけの少ない衣服を着たりしてなるべく刺激を避けるよう指導しましょう。

対処法

しっかり予防を行ったとしても皮膚症状は出てきてしまうことが多いです。症状発現あればCTCAEによるGrade判定を行い、Grade3以上であれば投与減量または休薬を行います。CTCAEにはざ瘡様皮膚炎、皮膚乾燥、爪囲炎、搔痒の4種類でのカテゴリがあります。日常生活に影響が出るようになればGrade3に当てはまってきます。

抗腫瘍効果と副作用の現れる機序が同じであるため、皮膚障害が現れている人ほど薬が効いているとも言えるため、減量や休薬は慎重に行います。

それぞれの皮膚症状が起こった時の対応についてまとめていきます。

ざ瘡様皮膚炎

ステロイド外用剤塗布にて対応

投与部位によるステロイド剤の使い分けは以下の通りです。通常の皮膚炎より比較的強めのステロイド剤を用いることが特徴です。

Grade1~2Grade3
頭皮strongvery strong
顔面mediummedium
体幹、四肢strong or very strongstrongest

頭皮にはローションタイプが推奨されます。

強いステロイド剤を使用しても効果がない場合は内服のステロイド剤投与も考慮します。

②内服抗菌薬にて対応

抗炎症作用のあるミノサイクリン(ミノマイシン)、ドキシサイクリンが第一選択薬です。ミノサイクリンの場合は200mg 2×で投与し、症状をみて減量・中止していきます。

皮膚乾燥

予防でも使用しますが、保湿剤を塗布していきます。また、皮膚亀裂のある場合は症状によりステロイド剤を使用することもあります。

爪囲炎

爪囲炎が現れた際には絆創膏は貼らずに、テーピングをするよう指導します。また、爪は切り過ぎずにある程度の長さを保つよう指導します。入浴はできるだけシャワー浴を行い、洗浄剤をよく泡立ててから患部に使用するようにします。

腫脹や肉芽形成がある場合には強めのステロイド剤を使用します。

電解質異常

頻度・時期

約30%の頻度で起こります。

約半分の患者さんが投与開始後12週間未満で発現しています。

症状

低マグネシウム血症:食欲不振・嘔吐、脱力感、眠気、筋肉のけいれん、ふるえ、心電図異常、不整脈など(<1.2mg/dLで症状発現)

低カリウム血症:筋力低下、筋肉痛、麻痺、自律神経失調など(<3mEq/L以下で症状発現)

低カルシウム血症:嘔吐、下痢、手指のしびれ、けいれん、せん妄、幻覚、心電図異常、不整脈など(7mg/dL未満で症状発現)

対処法

毎月測定するようにし、低下あれば補充を行います。

(血清Mg≦1.2mg/dLであれば必ず補充を行います。)

口内炎

頻度・時期、症状

頻度は約16%投与開始後7~10日で発現します。

がん化学療法における口内炎の好発部位は口唇裏面、頬粘膜、下側縁部から舌腹などです。

予防法

口腔内を清潔に保つことが予防につながります。また、がん化学療法開始1~2週間前には歯科受診をして歯石除去や虫歯治療を済ませておくことも大事です。

対処法

口内炎への標準的な治療法は確立していませんが、以下の3つのポイントを対症療法として行います。

  1. 口腔内の清潔保持
  2. 口腔内保湿
  3. 疼痛管理

薬を使用する場合にはうがい薬(アズレンスルホン酸、リドカイン)や軟膏(デキサメタゾン等)などを検討します。

まとめ

インフュージョンリアクション、皮膚障害、電解質異常、口内炎の他にも、頻度は低いですが間質性肺炎の副作用もあります。(頻度1.3%)

淡を伴わない咳(空咳)、息切れ・呼吸困難、発熱などの症状が出たら連絡するように患者さんに伝えておきましょう。

どの抗がん剤でも副作用は起こりますが、抗EGFR抗体では上記の特徴的な副作用が起こります。副作用は予防と対処が重要です。それぞれ患者さんに伝えるべきことをあらかじめ伝えておき、起こった場合には適切に対応していきましょう。