抗菌薬

皮膚軟部組織感染症の抗菌薬選択まとめ

起炎菌の種類も少なく、使われる抗菌薬の種類も多くない。

だけど、疾患と抗菌薬選択を間違えると命に関わることもある。

そんな皮膚軟部組織感染症の特徴と抗菌薬選択について解説します。

皮膚軟部組織感染症は見分け方が大事!!

皮膚軟部組織感染症の治療では、丹毒なのか、蜂窩織炎なのか、壊死性筋膜炎なのか、

これを見分けることがポイントになります。

実際のところ診断を行うのは医師ですから、薬剤師が行うのは、この診断に対して、抗菌薬の選択が間違っていないかどうかの確認。

もし、選択が間違っていれば迷わず疑義紹介しましょう。

診断名は深さで決まる。

皮膚軟部組織感染症って、起炎菌もなくて、体の部位でもなくて、皮膚軟部組織の感染の深さで疾患名が決まるんです。

表皮が伝染性膿痂疹、真皮が丹毒、皮下組織が蜂窩織炎、筋肉まで到達すると壊死性筋膜炎といいます。

伝染性膿痂疹

伝染性膿痂疹は別名、とびひとしてよく知られています。

重症化することは少なく、外来で治療されます。

起炎菌はブドウ球菌や、溶連菌。

セファレキシンが第一選択で、5日間程度でだいたいよくなります。

βラクタムにアレルギーがあればクリンダマイシンでも良いでしょう。

丹毒

丹毒は、限局性の腫脹、疼痛、腫脹を症状とする、真皮を中心とした比較的浅い感染症。

感染が浅いため、感染部位と正常部位の境界が明瞭なのが特徴。

原因菌はほぼ溶連菌です。

溶連菌はペニシリンの感受性が100%なので、自信を持って丹毒と言い切れる状況であれば、ペニシリンGを選択でいいでしょう。

蜂窩織炎

皮下組織まで到達している、やや深い感染症。

症状は丹毒と同じですが、感染がやや深いため、境界が不明瞭になります。

原因菌はほとんどが、黄色ブドウ球菌と溶連菌の混合感染症。

そのため、両方カバーできる、セファゾリンが第一選択です。

壊死性筋膜炎

壊死性筋膜炎の診断

皮膚軟部組織感染症の治療で最も重要なのは、壊死性筋膜炎を見逃さないこと。壊死性筋膜炎は命に関わる疾患です。

見た目以上に疼痛が激しい、バイタルがすこぶる悪い、X線写真にガス像がある、などの所見が見られる場合、壊死性筋膜炎が疑われます。

その場合、すぐに外科医にコンサルし、fingertestという試験切開で診断されます。

LRINECスコア

診断を行うのは医師ですが、薬剤師にも疑うことはできます。

蜂窩織炎の診断で治療しているが、経過が悪い。
そんな時にLRINECスコアをチェックしてみましょう。

8点以上で、96%以上の確率で壊死性筋膜炎であることがわかっています。

CRP≧15mg/L4点
白血球15,000~25,000/μL2点
>25000/μL1点
ヘモグロビン11.0~13.5g/dL1点
≦11g/dL2点
Na<135mEq/L2点
クレアチニン>1.6mg/dL2点
血糖値180mg/dL1点
表:LRINECスコア

壊死性筋膜炎のtype

壊死性筋膜炎にはタイプがあります。

typeⅠはグラム陽性菌、グラム陰性菌、嫌気性菌の混合感染。
ほとんどの場合が糖尿病患者。

typⅡは溶連菌やクロストリジウムによる単独感染症。

typeⅡであれば起炎菌をターゲットにデスカレーションできますが、
typeⅠであれば初期治療はフルカバーする必要があります。

壊死性筋膜炎の薬物治療

壊死性筋膜炎の治療は、外してしまうと命に関わるので、初期治療はフルカバーします。

抗菌薬はMEPM(or PIPC/TAZ) +VCM +CLDM

クリンダマイシンは嫌気性菌カバーではなく、毒素産生の抑制が目的です。

精査後、typeⅡだった場合、PCG +CLDMにデスカレーション。

typeⅠでも適切にデスカレーションしますが、嫌気性菌は検出されていなくても、カバーし続けます。

複合感染が一般的なのと、嫌気性菌は培養で生えにくいからです。

最終的にはABPC/SBTなどにデスカレーションできることがあります。

まとめ

伝染性膿痂疹、丹毒、蜂窩織炎、壊死性筋膜炎は感染の深さで決まること。

丹毒と蜂窩織炎の見極め方と抗菌薬の選択。

壊死性筋膜炎は診断やLRINECスコア、type、初期治療とデスカレーションの方法など、ちょっと詳しめに解説しました。

この記事を読むだけで、かなり皮膚軟部組織感染症の薬物治療には介入できるようになるのかな、と思います。

みなさまの業務に役立ててもらえれば幸いです。