抗腫瘍薬

免疫チェックポイント阻害薬

日本発、オプジーボ(ニボルマブ)の登場で一躍有名となった免疫チェックポイント阻害薬。「免疫チェックポイント阻害薬って、他にもいくつか薬があるんだよね?」と知っている人は多いと思いますが、具体的にどんな薬があるか分かりますか?

今回は分子標的薬である免疫チェックポイント阻害薬についてまとめます。

英語では ICI : Immune Checkpoint Inhibitor と書きます。

作用機序

人間の体内では、外から入ってきた病原菌や毒素などを除去しよとする機構:免疫機構が働いています。

これは、がんという病気においても同じです。体内での免疫監視機構は、がん化した細胞を見つけて排除する働きも持っています。

具体的に言うと、リンパ球のひとつであるT細胞ががん細胞を認識してサイトカイン、パーフォリン、グランザイムなどの物質を放出し、がん細胞のアポトーシスを誘導します。

しかし、がん細胞はこの免疫機構から逃れる仕組みを備えています

がん細胞は細胞表面にPD-L1という分子を発現していますが、これがT細胞表面に発現しているPD-1と結合するとT細胞を不活性化させ、免疫機構から逃れてしまうのです。

現在、このPD-1、PD-L1と結合する抗体薬抗PD-1抗体薬、抗PD-L1抗体薬)が出ています。それぞれの分子に結合することでPD-1とPD-L1の結合を阻害し、がん細胞がT細胞の攻撃から逃れることを阻止します。

また、PD-1/PD-L1の機構と似たものがもうひとつあります。

T細胞表面上にはCTLA-4という分子も存在しています。CTLA-4はがん細胞表面上にあるCD80/86と結合することによりT細胞が不活性化され、上記の機序と同じようにがん細胞は免疫機構から逃れてしまいます。

現在、CTLA-4に結合する薬抗CTLA-4抗体薬)も発売されています。

分類

同じ分類の薬でもいくつか種類があり、適応がん種に細かな違いがあります。適応がん種はどんどん拡大してきており、まだ治験中のがん種もあるとのことで、今後も新しいがん種が入ってくる可能性は高いです。

抗PD-1抗体

T細胞表面上に存在するPD-1に結合する抗体です。

ニボルマブ(商品名:オプジーボ)

2014年9月 販売開始

適応:

悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頚部がん、胃がん、悪性胸膜中皮腫、MSI-High大腸がん、食道がん

ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)

2017年2月 販売開始

適応:

悪性黒色腫、非小細胞肺がん、ホジキンリンパ腫、尿路上皮がん、MSI-High固形がん、腎細胞がん、頭頚部がん、食道扁平上皮がん(PD-L1陽性)

抗PD-L1抗体

がん細胞表面上に存在するPD-L1に結合する抗体です。

アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)

2018年4月 販売開始

適応:規格で適応がん種に違いがあります。

1200mg⇒非小細胞肺がん、小細胞肺がん(進展型)、肝細胞がん

840mg⇒乳がん(PD-L1陽性、HR陰性、HER2陰性)

デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)

2018年8月 販売開始

適応:

非小細胞肺がん(根治的化学放射線療法後の維持療法)

小細胞肺がん(進展型)

アベルマブ(商品名:バベンチオ)

2017年11月

適応:メイケル細胞がん、腎細胞がん、尿路上皮がん(2021年2月~適応追加)

抗CTLA-4抗体

T細胞表面上に存在するCTLA-4に結合する抗体です。

イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)

2015年8月 販売開始

適応:

悪性黒色腫、腎細胞がん、MSI-High大腸がん、非小細胞肺がん

※腎細胞がん、MSI-High大腸がんにはオプジーボと併用して使用します。

オプジーボ、キイトルーダ、ヤーボイの適応には「MSI-High大腸がん」が入っていますが、このMSI-Highとは一体何でしょうか。

MSI-Highって何??

MSI-High=高頻度マイクロサテライト不安定性

DNAの塩基配列において同じ文字列が繰り返されている部分(=マイクロサテライト)ではがん細胞が発現しやすい状態となっています。MSI-Highは遺伝子検査で確認できますが、子宮内膜がん、胃がん、小腸がん、大腸がん、卵巣がん、腎盂・尿管がん、前立腺がん、乳がんなど様々ながんで見られています。免疫チェックポイント阻害薬は現在MSI-High「大腸がん」のみ適応ですが、今後適応は増えていきそうですね。

副作用

免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、免疫関連副作用irAE=immune-related Adverse Events と呼ばれています。

免疫チェックポイント阻害薬は、他の抗がん剤に比べると副作用が起こりにくい薬になります。しかし、免疫は体内のどこでも起こっているものであるため、体中のあらゆる場所で副作用が現れる可能性があります。

具体的なirAEの症状を示していきます。(発現頻度、発現時期についてはオプジーボ適正使用ガイドより引用)

間質性肺炎

頻度:3.1%、時期:84.5日、自覚症状:発熱、乾性咳嗽、呼吸苦、息切れ

間質性肺炎が認められた場合には投与を中止する必要があります。リスク因子としては、高齢(60歳以上)、間質性肺疾患の既往、肺手術の既往、呼吸機能低下、肺の放射線治療の既往、抗がん剤の多剤併用中の患者、腎障害などがあります。

腸炎、下痢

頻度:13.3%、時期:44日、自覚症状:腹痛、下痢、嘔吐、血便

腸炎からの穿孔、イレウスに至った症例も確認されているため、必要な場合には内視鏡検査などを受ける必要があります。

内分泌障害

頻度:10.3%、時期:75.5日

甲状腺機能障害(低下症、亢進症)、副腎障害、血糖値上昇(1型糖尿病)などが起こる可能性があります。血液検査に甲状腺機能検査(TSH、F3、F4)や副腎機能検査(ACTH、コルチゾール)や糖尿病検査(HbA1c等)を追加することが望まれます。

神経障害

頻度:10.6%、時期:33日

末梢神経障害(手足のしびれ、感覚障害)、ギランバレー症候群(下肢の筋力低下、歩行障害、下痢、腹痛)、脱髄疾患(麻痺、視力障害)などが見られる可能性があります。

肝炎

頻度:6.5%、時期:57.5日

劇症肝炎、肝不全、肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎等が起こった症例が確認されています。定期的に肝機能検査を行いモニタリングしていきましょう。

副作用説明のポイント

上に記載した副作用の他にも、腎障害、インフュージョンリアクション、皮膚障害、横紋筋融解症、脳炎などさまざまな副作用が起こる可能性があります。これほど多くの副作用を患者さんにどのように伝えれば良いのでしょうか。

免疫チェックポイント阻害薬の患者説明用パンフレットには、副作用のページには全身の図があり副作用が細かく書かれていることが多く、それに沿って患者さんに説明すると不安を煽ってしまうことも多くあります。(私自身も経験があります。)しかし、起こりえる副作用は説明しておく必要があります

★患者さん説明時のポイント★

個人的な見解ですが、私が実際に行っている服薬指導時のポイントを示します。

  • 免疫チェックポイント阻害薬は他の抗がん剤に比べると副作用が起こる確率が低い薬であること
  • 免疫に関わる薬であるため副作用は体中のどこに出てくるか分からないということ(具体的には間質性肺炎、腸炎、内分泌障害、神経障害、肝炎など)
  • 内分泌障害、肝炎、腎障害等、検査値で分かる副作用は病院の血液検査等で随時チェックしていくこと
  • 間質性肺炎、腸炎等自覚症状が出る副作用については(症状についてそれぞれ説明し)、起こった場合には伝えること

まとめ

分子標的薬の中でも比較的新しい薬である免疫チェックポイント阻害薬。

有効性・安全性が高くとてもいい薬ですが、デメリットとしては薬価が高いことが挙げられます。

現在、発売された当初に比べると価格は大幅に下がりましたが、現在の価格で計算しても、オプジーボ1ヶ月投与で約82万円かかる計算となり、高額療養費制度の対象となってきます。他の免疫チェックポイント阻害薬も同様であるため治療方針を決定する際にはお金についても詳しく話しておく必要があります。

免疫チェックポイント阻害薬は、今後も適応がん種が広がってくることが予想されるため新しい情報が出たらぜひチェックするようにしましょう。