抗腫瘍薬

抗CD38抗体薬(分子標的薬)

今回は多発性骨髄腫の治療薬である、抗CD38抗体薬についてまとめます。

CD38とは

CD38とは細胞の表面に存在する分子(タンパク質)であり、多発性骨髄腫の治療薬のターゲットとなってます。

多発性骨髄腫とはB細胞系の最終分化段階の形質細胞ががん化したものですが、このB細胞上にCD38分子が存在しており、検査では強陽性を示します。

CDって何の略?

ところで、免疫系の話でよく出てくる「CD」とは一体何の略なのでしょうか。

答えは「Cluster of Differentiation」です。Clusterは「集団」「集まり」という意味、Differentiationは「差別化」「区別」という意味ですね。(「CD」という言葉自体には特に意味はないようです)

細胞表面上にある分子のことであり、受容体やリガンドとして作用することでシグナルカスケードを動かし、細胞にとって何かしらの影響を与えることが多いです。

ちなみにヒトでのCDは371まで番号がついているそうです!(多いですね)

※wikipediaより

作用機序

抗CD38抗体は主に以下の4つの作用機序を持っています。

(下に示すB細胞=がん細胞と考えてください。)

①ADCC:抗体依存性細胞障害

ADCC = antibody dependent cellular cytotoxicity

ADCCは、B細胞に抗CD38抗体が結合するとNK細胞やマクロファージなどの免疫細胞を呼び寄せ、B細胞を攻撃するというものです。

②CDC:補体依存性細胞障害

CDC = Complement-Dependent Cytotoxicity

CDCは、B細胞に抗CD38抗体が結合すると補体系が活性化し、細胞表面で一連の反応が起こり、B細胞を攻撃するというものです。

実は、このCDCの作用がインフュージョンリアクション発現に関係すると言われています。

CDC作用が強いほどインフュージョンリアクションが起こりやすい

③PCD:直接的アポトーシスの誘導

PCD=programmed cell death

抗CD38抗体薬がBリンパ球のCD38抗原に結合することで、B細胞のアポトーシスを引き起こします

④ADCP:抗体依存性細胞貪食

ADCP=antibody-dependent cellular phagocytosis

イメージ図はADCCの図と同じように考えてください。

ADCPは、B細胞に抗CD38抗体が結合するとマクロファージや好中球などの免疫細胞を呼び寄せ、B細胞を貪食するというものです。

抗CD38抗体薬間での作用機序の違い

後で示しますが、抗CD38抗体薬には主にDaratumumab、Isatuximabの2種類がありますが、この2つの中でも作用機序の細かな違いがあります。(表参照)

作用機序DaratumumabIsatuximab
CDC++++
ADCC++++
ADCP+++不明
直接的アポトーシス誘導++
架橋薬存在下でのアポトーシス誘導++++++
細胞外酵素活性の阻害++++

比べてみると、DaratumumabはCDC,ADCC,ADCPの作用が強くIsatuximabはアポトーシス誘導作用が強いことが分かります。

主な薬と適応

先ほど示したように抗CD38抗体薬は主に2種類あります。それぞれの製剤の特徴についてまとめていきます。

ダラツムマブ Daratumumab (商品名:ダラザレックス)

2017年11月 販売開始

適応:多発性骨髄腫

*特徴

  • ヒト化型抗体
  • 多発性骨髄腫の推奨治療はDLd療法(ダラツズマブ+レナリドミド+デキサメタゾン)DMPB療法(ダラツズマブ+メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ)
  • 皮下注製剤が登場(New!2021.5 発売)

※その他、DBd療法(ダラツズマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン)、DKd療法(ダラツズマブ+カルフィゾミブ+デキサメタゾン)などのレジメンもあります。

イサツキシマブ Isatuximab (商品名:サークリサ)

2020年8月 販売開始

適応:再発又は難治性の多発性骨髄腫

*特徴

  • キメラ型抗体(インフュージョンリアクション発現率は38.2%と低い)
  • DLd療法やDMPB療法で無効例or再発例に使用
  • IsaPd療法(イサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン)

「ダラツズマブが効かなかった患者さんに、同じ作用機序のイサツキシマブを投与して効果はあるの?」と疑問に思うかもしれません。

ダラツズマブ投与後は一旦、CD38発現量が低下してもPD後6ヶ月経過すればCD38発現量は元に戻ります。(2ヶ月では20%、4ヶ月では35%のCD38発現量が回復)また、研究データによるとダラツズマブ投与後3〜4ヶ月経てばイサツキシマブが有効だと考えられています。

また、上記のようにダラツズマブとイサツキシマブでは作用機序が異なる点もあるため、ダラツズマブ無効例であってもイサツキシマブの効果は期待できます。

副作用

インフュージョンリアクション

ダラツムマブ:46.4%、イサツキシマブ:38.2%で発現するとのデータあり。

多くの場合は初回投与時に発現するため、悪心・悪寒・咳嗽・呼吸困難・高血圧などの症状に注意しながら投与していきましょう。

また添付文書上には、前投薬としてステロイド、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤の投与が必要だと書かれています。抗CD38抗体薬の投与1時間前までには投与しておきましょう。

感染症

主に上気道感染、気管支炎などの感染症や、肺炎、敗血症などの重症な感染症につながる恐れもあります。

イサツキシマブ投与によるデータ:

上気道感染(28.3%)、気管支炎(23.7%)、肺炎(20.4%)、敗血症(1.3%)

予防法は特にありませんが、もし感染症を併発した場合は治るまで投与を中止しましょう。

腫瘍崩壊症候群

頻度は低いですが重篤な腫瘍崩壊症候群が起こる可能性があります。

そもそも、固形がんよりも血液がんの方が腫瘍崩壊症候群が起こる可能性が高いため、リスクに応じて予防でフェブキソスタットを服用すると良いですね。

まとめ

抗CD38抗体薬についてまとめました。

ご存知の方もいると思いますが、抗CD38抗体薬は抗CD20抗体薬と作用機序がほぼ同じです。

(ただし適応は違いますが)

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