抗腫瘍薬

抗CD20抗体(分子標的薬)

今回は分子標的薬のひとつ、抗CD20抗体についてまとめます。

作用機序

CD20とは

抗CD20抗体とは、名前の通りCD20に結合する抗体です。では、CD20とは何でしょうか。

CD20とはB細胞に特異的に発現している膜表面分子です。B細胞は免疫細胞であるリンパ球の一種であり、体液性免疫で重要な役割を果たす細胞です。悪性リンパ腫などの疾患ではこのB細胞ががん化して悪性B細胞となりますが、がん化したB細胞の大部分はこのCD20を発現しています。

抗CD20抗体はこのCD20に特異的に結合することにより、抗腫瘍効果を現わすことができます。具体的な作用機序は4つあると言われています。

①ADCC : 抗体依存性細胞障害

ADCC = antibody dependent cellular cytotoxicity

ADCCは、B細胞に抗CD20抗体が結合するとNK細胞やマクロファージなどの免疫細胞を呼び寄せ、B細胞を攻撃するというものです。

抗CD20抗体による抗腫瘍効果はこのADCCによるものが一番大きいのではないかと言われています。

②CDC : 補体依存性細胞障害

CDC = Complement-Dependent Cytotoxicity

CDCは、B細胞に抗CD20抗体が結合すると補体系が活性化し、細胞表面で一連の反応が起こり、B細胞を攻撃するというものです。

③PDC:アポトーシス

抗CD20抗体薬がBリンパ球のCD20抗原に結合することで、アポトーシスを引き起こします。

④ADCP:抗体依存性細胞貪食

ADCP=antibody-dependent cellular phagocytosis

イメージ図はADCCの図と同じように考えてください。

ADCPは、B細胞に抗CD20抗体が結合するとマクロファージや好中球などの免疫細胞を呼び寄せ、B細胞を貪食するというものです。

ちなみに、抗CD20抗体薬にはタイプⅠとタイプⅡがあります。タイプの違いにより上に示した4つの作用機序の活性が高いか低いかの違いがあります。(タイプⅠ:リツキサン、アーゼラ タイプⅡ:ガザイバ)

  • ①のADCC活性はタイプⅠ・Ⅱのどちらも有している
  • ②のCDC活性はタイプⅠでは高く、タイプⅡでは低い
  • ③のPDC活性はタイプⅠでは低く、タイプⅡでは高い

主な薬と適応

抗CD20抗体には3種類の薬があります。

リツキシマブ Rituximab(商品名:リツキサン)

2001年9月 リツキサン販売開始

(バイオ後続品が2018年1月にはサンドから、2020年1月にはファイザーから出ており薬価がだいぶ安くなっています)

*適応:なんと適応は9個もあります

  1. CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
  2. CD20陽性の慢性リンパ性白血病
  3. 免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患
  4. 多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎
  5. 難治性のネフローゼ症候群
  6. 慢性特発性血小板減少性紫斑病
  7. 後天性血栓性血小板減少性紫斑病
  8. 腎移植、肝移植の血液型不適合移植における抗体関連型拒絶反応の抑制
  9. インジウム イブリツモマブ チウキセタン注射液及びイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン注射液投与の前投与

(太字で示している病名は後発品でも適応があるものです)

実際には筆者の病院では①の悪性リンパ腫で使用することが多いですね。(レジメンはR-CHOPやDA-R-EPOCHなど)

*用法用量:(悪性リンパ腫の場合)1コースに1回、375mg/㎡を点滴静注。最大12回まで投与。

*調製:「生食または5%TZにて10mg/mLに希釈し調製する」というのが定番でしたが、2020年12月に改訂があり「生食または5%TZにて1~4mg/mLに希釈し調製する」に変更となりました。

*投与速度:インフュージョンリアクション予防のため決まりがあります。初回投与時 最初の30分間は50mg/hの速度で投与し、30分ごとに50mg/hずつ上げて最大400mg/hで投与できる。

2回目以降 100mg/hで開始し、30分ごとに100mg/hずつ上げて最大400mg/hで投与できる。(悪性リンパ腫の場合は90分投与でOKに改訂になりました)

オファツムマブ Ofatumumab(商品名:アーゼラ)

2013年5月 販売開始

*適応:再発又は難治性のCD20陽性の慢性リンパ性白血病

*用法用量:初回 300mg、2回目以降 2000mgを点滴静注、8回目まで週1回投与を繰り返す。8回目の投与4~5週後から、4週間に1回
2000mgを点滴静注し、12回目まで投与を繰り返す。

オビヌツズマブ(商品名:ガザイバ)

2018年8月 販売開始

適応:CD20陽性の濾胞性リンパ腫

用法用量:

  • 1日1回1000mgを点滴静注。
  • 導入療法は、1サイクル目は1、8、15日目、2サイクル目以降は1日目に投与。
  • 維持療法では、単独投与により2カ月に1回、最長2年間、投与を繰り返す。

基本的にどの薬もCD20陽性であることを確認する必要があります。(リツキシマブの血液癌でないもの以外)

また、アーゼラとガザイバもリツキサンと同じく溶解液の濃度や投与速度に決まりがあるので添付文書で確認しましょう。

副作用

インフュージョンリアクション

リツキシマブ臨床試験で起こった非血液毒性の副作用で90%がインフュージョンリアクションでした。

初回投与の最初に点滴速度を速めたタイミングで一番起こっている確率が高いため、投与速度を上げる際には注意深く観察しましょう。

症状:発熱、悪心、頭痛、そう痒、発疹、咳、血管浮腫、口内乾燥、多汗、眩暈、倦怠感など。

また、インフュージョンリアクション予防のために前投薬の投与を行います。(アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬、ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン薬、デキサメタゾン等のステロイド薬

腫瘍崩壊症候群

治療により腫瘍細胞の急速な崩壊が起こり、大量の核酸、リン酸、カリウムが細胞内より血中に放出され、電解質異常(Na、K、Cl、Ca、P)、尿酸やリン酸カルシウムの析出での重篤な腎不全が起こる可能性があります。

投与開始後12~24時間以内に起こることが多いです。

腫瘍崩壊症候群のリスクが高い場合には高尿酸血症治療薬フェブキソスタット(商品名:フェブリク)をあらかじめ投与する場合があります。がん化学療法に伴う高尿酸血症 フェブリク投与ガイド参照

B型肝炎ウイルスによる劇症肝炎

B型肝炎ウイルスキャリアにリツキシマブを投与することでに劇症肝炎、重篤な肝炎、肝不全等が発現した報告があります。投与終了後1年以内に生じることが多いため、投与中・投与終了後にも肝機能の観察をします。

また、投与開始前にB型肝炎ウイルス感染の有無を確認します。*2016年にB型肝炎対策ガイドラインが出ておりそれに沿って行います。

間質性肺炎

投与開始から12週後までに発現していることが多くあります。

症状は発熱、呼吸困難、低酸素血症、乾性咳嗽であるため患者さんに説明しておきましょう。症状のある場合は胸部X線やCTで確認し、治療を行います。

その他

副作用は、その他にも「皮膚粘膜症状」「血球減少」「感染症」「PML(進行性多巣性白質脳症)」「消化管穿孔・閉塞」などがあります。血球減少では好中球が一番低下しやすいです。

まとめ

抗CD20抗体薬についてまとめました。

リツキシマブが一番よく出ている薬ではありますが、他の抗がん剤(殺細胞性抗がん薬)と併用される場合が多いため、副作用はリツキシマブのもの+併用する抗がん剤のものを考えることが大切です。