抗腫瘍薬

抗VEGF / VEGFR抗体薬

今回は分子標的薬の中のひとつ、抗VEGF/VEGFR抗体薬についてまとめます。

作用機序

VEGFとは?

VEGF = vascular endothelial growth factor

日本語で言うと、血管内皮細胞増殖因子のことを指します。これは一体何なのでしょうか。

わたしたちの体の中の細胞は血管から栄養を取り入れて増殖しており、ここにVEGFが関わってきます。

VEGFは血管内皮細胞表面にあるVEGFR (= vascular endothelial growth factor:血管内皮細胞増殖因子受容体)に結合することで血管内皮細胞の増殖や遊走が活性化され、血管新生を促進します。

特に、がん細胞ではより多くの栄養を必要とするため、VEGFをたくさん産生し、血管新生が亢進しています。

ここに抗VEGF抗体薬抗VEGFR抗体薬を投与することで、血管新生を阻害し、がん細胞が増殖するのを抑えていきます

主な薬と適応

抗VEGF抗体薬、抗VEGFR抗体薬は現在2つの薬が販売されています。

ベバシズマブ Bevacizumab(商品名:アバスチン)

抗VEGF抗体薬 

2007年6月 販売開始

適応:

  • 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
  • 扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
  • 手術不能又は再発乳癌
  • 悪性神経膠腫
  • 卵巣癌
  • 進行又は再発の子宮頸癌
  • 切除不能な肝細胞癌

ベバシズマブは2019年12月にファイザー、第一三共より後発品が出ており、薬価は半分程度安くなりました。しかし、どちらのメーカーの後発品も現在のところ大腸がん肺がんの2つしか適応が通っていません。そのため乳がんや悪性神経膠腫などにも使用している病院では後発品を採用しにくい現状があります・・・(そのうち適応が追加されるといいですね)

ちなみに、先発のアバスチンの値段はだいたい 100mg=3万5千円、400mg=13万円 です。

ラムシルマブ Ramcirumab(商品名:サイラムザ)

抗VEGFR抗体薬 

2015年6月 販売開始

適応:

  • 治癒切除不能な進行・再発の胃癌
  • 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
  • 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
  • がん化学療法後に増悪した血清AFP値が400ng/mL以上の切除不能な肝細胞癌

アバスチンと作用機序が似ているとはいえ、適応がん種は結構違いがあります。また、サイラムザはアバスチンよりも薬価が高めです。(100mg=7万6千円、500mg=36万円)

副作用

殺細胞性抗がん薬のような副作用は出にくいですが、特徴的な副作用が出るため覚えておきましょう。(頻度等のデータはアバスチン適正使用ガイドより)

出血

頻度:43.1%(Grade3以上 6.9%)

  • 粘膜出血(鼻出血、歯肉出血、膣出血)
  • 消化管出血(吐血、下血)
  • 肺出血(血痰、喀血)
  • 脳出血

肺出血、脳出血が出た場合には投与中止となりますが、粘膜出血や消化管出血の場合にはGrade2まで投与可能となっています。出血の見られる患者さんは注意深く観察を続けましょう。

高血圧

頻度:28.9%(Grade3以上 11.5%)

150mmHg/110mmHg以下であれば投与可能ですが、それ以上になると改善するまで休薬の対象となります。血圧が高い患者さんには降圧剤を使用して様子を見ていきましょう。(ARBCa拮抗薬などの投与)

蛋白尿

頻度:10.1%(Grade3以上 1.8%)

Grade2,3(尿蛋白2+~4+)はGrade1になるまで休薬が必要となります。(Grade4は投与中止)

この基準は厳しく実臨床では2+の患者さんなどはよく見られています。その時には尿中UPC比(尿中蛋白/クレアチニン比)を測定し、3.5に達していない場合は投与継続可能です。(3+や4+の患者さんでもUPC比<3.5の患者さんは意外と多くいます)

この副作用があるために抗VEGF/VEGFR抗体薬投与中の患者さんは定期的に尿検査をする必要があります。「血液検査のオーダーは毎回しているけれど、尿検査のオーダーをしていなかった」ということがあるため、チェックしましょう。(適正使用ガイドでは来院毎の検査が望ましい、と記載あり)

消化管穿孔

頻度:2.3%

頻度は低いですが重大な副作用です。治験で認められた穿孔は大腸穿孔、直腸穿孔、小腸穿孔、回腸穿孔でした。

消化管など腹腔内の炎症を有している患者ではリスクが高くなります。

その他の副作用には、頻度は低いですが静脈血栓症、創傷治癒遅延、アナフィラキシー、間質性肺炎、骨髄抑制などがあります。骨髄抑制については、胃がんRam+DTX(サイラムザ+ドセタキセル)療法で起こるリスクが高く、あらかじめG-CSF製剤での予防適応となります。(FNリスク20%以上でG-CSF予防適応)また、創傷治癒遅延が現れる可能性があるためポート増設術を行ったすぐ後の投与などは避けましょう。(添付文書の警告に術後創部が治癒してから投与との記載あり)

番外編:VEGF関連薬

アキシチニブ(商品名:インライタ)

VEGFRを阻害する小分子(経口)薬です。

腎細胞がんアベルマブ(バベンチオ)と併用して使用します。

ラニビズマブ(商品名:ルセンティス)・アフリベルセプト(商品名:アイリーア)

どちらも硝子体内注射用の薬であり、VEGF阻害薬です。

適応は以下の通り。

  • 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症
  • 網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
  • 病的近視における脈絡膜新生血管
  • 糖尿病黄斑浮腫

アイリーアには、これに加えて「血管新生緑内障」も適応となっています。

まとめ

今回は抗VEGF/VEGFR抗体薬についてまとめました。現在使用頻度の高い種類の薬であるためしっかり覚えておきましょう。

また、副作用も特徴的であり、高血圧や蛋白尿、鼻血などの副作用は出ている患者さんも多く見られます。投与後のモニタリングも欠かさず行っていきましょう。