抗腫瘍薬

SOX療法 処方チェックと服薬指導

SOX療法は再発の胃がんでよく使用されているレジメンです。(大腸がんで使用されることもあります)

内服薬のティーエスワンも含んでいるレジメンであることから、患者さんに服薬指導を行い、正しく飲んでもらうことが重要です。また、外来院外処方箋を発行している病院も多いため、薬局薬剤師も知っておくことが望ましいレジメンです。

今回はSOX療法の処方チェックや服薬指導をするのに必要な基本知識をまとめていきます。

SOXレジメンとは

SOX療法 = TS-1(ティーエスワン) + L-OHP(オキサリプラチン) の組み合わせのレジメンです。ティーエスワンは内服薬、オキサリプラチンは注射薬です。

ティーエスワンはフッ化ピリミジン系の代謝拮抗薬、オキサリプラチンは白金製剤の抗がん剤です。おさらいに以下の記事をどうぞ。

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SOX療法の投与スケジュールは以下のようになっています。

day1に制吐剤、オキサリプラチンを点滴投与

day1夕からティーエスワン内服開始しday15朝まで14日間服用

day15~day21の1週間は休薬期間となります。

※ティーエスワンは2週間投与し、1週間休薬するため略して「2投1休」とも呼ばれています。

1コース/3週間のレジメンであり、これを繰り返して治療していきます。

胃がんでのSOX療法は切除不能、再発胃がんの1次治療で使われ、PDまで使用されます。

レジメンチェック

制吐剤の選択

SOX療法の催吐性リスク分類はどうでしょうか。それぞれの薬の催吐性リスクを調べてみましょう。すると、

  • ティーエスワン=軽度催吐性リスク
  • オキサリプラチン=中等度催吐性リスク

となります。よって、レジメン全体としては催吐性リスクの高いオキサリプラチンに合わせて中等度催吐性リスクの制吐対策を行います。

(中等度催吐性リスク対策で使用される具体的な薬は下記記事参照)

抗がん剤*正しい制吐剤の選び方 抗がん剤の副作用で一番最初に思い浮かぶものは、、 悪心・嘔吐 ですよね。 最近は吐き気の副作用が少ない抗がん剤も数多く登場...

レジメンチェックをする際には、きちんと中等度催吐性リスクの対策ができているか確認しましょう。

投与量、投与方法

適正な投与量で処方されているかチェックしましょう。

ティーエスワン

体表面積(BSA)によって投与量が決まっています。

  • 1.25㎡未満 40mg/回
  • 1.25㎡~1.5㎡未満 50mg/回
  • 1.5㎡以上 60mg/回

腎機能の確認 Ccrを計算して確認します。

  • 40≦Ccr<60 1段階減量
  • 30≦Ccr<40 2段階減量
  • Ccr<30 投与禁忌       (大鵬薬品 適正使用ガイドより)

★処方が食後投与になっていることを確認(空腹時ではBA低下、効果減弱)

★ティーエスワン禁忌事項に当てはまっていないか確認

  • 骨髄抑制のある患者
  • 腎機能障害(Ccr<30)のある患者
  • 肝障害のある患者
  • フッ化ピリミジン系薬剤を投与中の患者
  • フルシトシンを投与中の患者
  • 妊婦

★併用薬確認:併用注意薬あり

  • フェニトイン:フェニトインの代謝が抑制され、血中濃度上昇
  • ワルファリン:ワルファリンの血中濃度上昇(機序不明)

オキサリプラチン

体表面積(BSA)によって投与量が決まっています。

★胃がんSOX療法でのオキサリプラチン投与量:100mg/㎡

※添付文書上の投与量では130mg/㎡となっているが、この量での胃がんのデータは少なくG-SOX試験で用いられた100mg/㎡の臨床情報が実際には多いため100mg/㎡での投与を推奨

※体表面積は投与日になるべく近い日付で測った身長、体重によって計算されていることを確認しましょう。

溶解液には5%ブドウ糖液 250mL~500mLを用い、投与時間は120分であることを確認しましょう。

★オキサリプラチン禁忌に当てはまっていないか確認

  • 感覚異常、知覚異常のある患者
  • 白金製剤による過敏症のある患者
  • 妊婦

SOX療法の副作用

起こりやすい副作用

では、SOX療法での副作用とは何があるでしょうか。起こりやすい副作用には以下のようなものがあります。()内は全グレードでの起こる確率を示しています。

  • 感覚性ニューロパチー(85.5%)
  • 血小板減少(78.4%)
  • 食欲不振(74.6%)
  • 好中球減少(68.9%)
  • 悪心(61.5%)
  • 白血球減少(60.7%)
  • AST上昇(60.7%)
  • 疲労(57.7%)
  • 貧血(55.3%)
  • 下痢(48.2%)

太字にしているものは、グレード3以上が出現する可能性が10%を超えるものです。つまり、細字のものは出る頻度は高いけれども比較的軽症で済む副作用太字のものは出る頻度も高く重症化する可能性が高い副作用、と言えます。

患者さんへ副作用の説明

では、これらの副作用を患者さんにどのように伝えれば良いのでしょうか。抗がん剤での副作用は数多くあるため、1つひとつを丁寧に説明しすぎるととても時間がかかるだけでなく、患者さんの不安を煽る原因にもつながります。頻度が高い副作用重症化する可能性のある副作用を重点的に説明し、対策できる副作用であれば対策方法も併せて説明するようにしましょう。

また、抗がん剤の副作用は自覚症状のあるものと、ないもの(検査値で分かる副作用)に分かれます。この2つに分けると説明しやすくなります。それぞれの起こりやすい時期も併せて説明しましょう、

自覚症状のある副作用

食欲不振・吐き気

day1のL-OHP投与日~day15のTS-1を飲み終わる日までが、特に出現する可能性があります。「あらかじめ制吐剤を投与しているため起こるリスクは低くなっているが、起きたら吐き気止めで対処する」旨を患者さんに伝えておきましょう。

下痢

TS-1の副作用で起こる可能性があります。特に、投与開始~20日間で起こりやすいと言われています。1日4回以上下痢が起こるようであれば相談するように伝えましょう。(下痢CTCAE:Grade2に当たる)また、起こったら下痢止めで対策する旨も伝えておきましょう。

末梢神経障害

L-OHPの副作用で生じる可能性があります。急性、慢性の場合があります。

急性:冷感刺激(冷たい物に触るとピリッとする)、扼感(喉が締め付けられるような感じ)などが現れる場合があります。

慢性:手足のしびれ(知覚異常、知覚麻痺など)総投与量が850mg/㎡以上でGrade3以上が10%以上見られます。(休薬により回復する)

起こったら伝えるようにしましょう。生活に支障が出るようであれば休薬等考慮していきます。

皮膚障害

TS-1による副作用です。紫外線の影響を受けやすくなり色素沈着が起こることがあります。夏場は薄い長袖を羽織ることをお勧めしても良いでしょう。

口内炎

殺細胞性抗がん剤で起こりやすい副作用となってきます。だいたい2週間くらい経ってから起こります。(普段から起こりやすい体質かどうかも影響します)

過敏症(アレルギー)

L-OHPによるものです。初回で起こる場合と、治療を繰り返して起こる(85mg/㎡の場合で中央値7~8コース)場合があります。症状としては蕁麻疹、顔面紅潮、呼吸困難、動悸などです。症状が起きたらすぐ言うように伝えましょう。

検査値で分かる副作用

骨髄抑制

10日間~2週間程度経過してから下がってきます。自分では分からない副作用であるため普段から手洗い・うがい等で感染対策に気を付けるよう指導しましょう。

肝障害

こちらも自覚症状はありませんが、病院の採血にて随時確認していく旨伝えておきましょう。

減量・中止基準

2コース目以降、治療を続けていく場合に投与日の採血や患者さんからの話で有害事象の確認を行います。有害事象が起こった場合にはグレード分類し、それが減量基準や中止基準に当てはまらないか確認をしましょう。

減量・中止基準

L-OHPTS-1
好中球数<500/m㎥1段階減量1段階減量
発熱性好中球減少症好中球<1000/m㎥かつ
体温38℃以上
1段階減量1段階減量
血小板数<25000/m㎥1段階減量1段階減量
Day29で<75000/m㎥1段階減量1段階減量
下痢、口内炎、手足症候群≧Grade31段階減量1段階減量
過敏症≧Grade3中止同量継続
末梢神経障害Grade21段階減量同量継続
Grade3≦Grade2まで休薬
回復後、減量再開
同量継続
Grade4中止同量継続

※体重が落ちることによって体表面積が下がってしまった場合(逆に上がった場合も)、±10%以上の誤差があれば投与量について医師に問い合わせを行いましょう。

減量方法

1段階減量

L-OHP : 75mg/㎡

TS-1 : 体表面積(BSA)による

  • BSA<1.25㎡ 25mg/回
  • 1.25㎡≦BSA<1.5㎡ 40mg/回
  • 1.5㎡≦BSA 50mg/回

2段階減量

L-OHP : 50mg/㎡

TS-1 : 体表面積(BSA)による

  • BSA<1.25㎡ 20mg/回
  • 1.25㎡≦BSA<1.5㎡ 25mg/回
  • 1.5㎡≦BSA 40mg/回

まとめ

今回はSOX療法について書きました。

処方チェックでは病院薬剤師、薬局薬剤師どちらも関わるレジメンとなっていますので、投与量や投与方法は適正かしっかり確認していきましょう。

また、指導はポイントを絞って説明していきましょう。

特に、初めて抗がん剤治療を始める患者さんは不安が大きいものです。

医療従事者側も不安を抱いていると患者さんに伝わってしまいます。説明内容を確認した後に指導に向かい、起こりやすい副作用については頭に入れておくようにしましょう。