抗腫瘍薬

ティーエスワンのすべて(処方チェックと服薬指導)

内服薬であり、薬局でも病院でも使用頻度の高い抗がん剤 ティーエスワン(TS-1)ですが、改めて薬の成分、作用機序、飲み方、注意するべきことは何か言えるでしょうか?

今回はTS-1の概要についてまとめていきます。

TS-1ってどんな薬

TS-1は殺細胞性抗がん薬の中でも代謝拮抗薬という種類になります。(詳しくは下記事参照)

代謝拮抗薬 今回は殺細胞性抗がん薬である、代謝拮抗薬についてお話します。 代謝拮抗薬は使用頻度の高い薬が多いため、しっかり頭に入れておきまし...

その中でもフッ化ピリミジン系という種類に分類されます。

TS-1は3種類の成分が配合された薬です。

具体的な成分で言うと、テガフール:ギメラシル:オテラシル=1:0.4:1で配合されています。

成分

テガフール(FT)

TS-1の効果を発揮する主成分です。

5-FU(フルオロウラシル)のプロドラッグであり、CYP2A6により徐々に5-FUに変換されます。

※プロドラッグ化された理由は作用持続のため(5-FUの半減期が10分なのに対してテガフールの半減期は約7.5時間と非常に長いです。)

5-FUはピリミジン塩基に構造が似ているため、DNA合成を阻害して抗腫瘍効果をあらわします。

ギメラシル(CDHP)

ギメラシルが配合されている理由は、抗腫瘍効果を増強するためです。

具体的には、5-FUの代謝酵素であるジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)を可逆的に阻害し、5-FUの濃度を高めます。(DPDは肝臓内、がん細胞内に存在しています)

オテラシルカリウム(OXO)

オテラシルカリウムが配合されている理由は、副作用である消化管障害を軽減するためです。

具体的には、消化管組織に分布しているオロテートホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)を可逆的に阻害します。それにより消化管でテガフールが活性化されるのを阻害し、消化管障害を抑制します。

適応がん種

ティーエスワンの適応がん種はたくさんあります。単剤で使用する場合と、他の抗がん剤と一緒に併用する場合があります。

単剤で使用

  • 胃がん(術後補助化学療法):4週間投与、2週間休薬(4投2休)で1年間投与
  • 乳がん(再発)
  • 膵がん、胆道がん(切除不能)

他の抗がん剤と併用

  • SOX療法(S-1+L-OHP):胃がん、大腸がん
  • S-1+DTX:胃がん
  • S-1+CDDP:胃がん
  • CBDCA+S-1:非小細胞肺がん

ティーエスワンの投与方法はレジメンによって異なるので注意しましょう。

SOX療法については以下の記事をチェック↓

SOX療法 処方チェックと服薬指導 SOX療法は再発の胃がんでよく使用されているレジメンです。(大腸がんで使用されることもあります) 内服薬のティーエスワンも含んで...

処方チェック

投与量の決定

ティーエスワンの投与量は体表面積によって決まります。

体表面積初回基準量(テガフール相当量)
1.25 m2未満40 mg/回
1.25 m2以上 ~ 1.5 m2未満50 mg/回
1.5 m2以上60 mg/回

初回基準量が分かったら、次は腎機能(Ccr)をチェックしましょう。

  • 40≦Ccr<60 ⇒1段階減量
  • 30≦Ccr<40 ⇒2段階減量
  • Ccr<30 投与禁忌 

高齢者はCcr 60を下回っている人が多いため、減量されているか確認しましょう。

注意点

禁忌

禁忌に当てはまる患者さんには投与できないので、チェックしておきましょう。

  • 重篤な腎障害(Ccr<30)のある患者
  • 重篤な肝障害のある患者
  • 抗真菌薬:フルシトシンを投与中の患者
  • 他のフッ化ピリミジン系抗がん剤を使用中の患者
  • 本剤の成分に重篤な過敏症の既往歴のある患者
  • 妊婦

併用薬の確認

ティーエスワンには併用注意の薬が2つあります。

  • フェニトイン:テガフールによってフェニトインの代謝が抑制され、作用が増強することがある。
  • ワーファリン:ワーファリンの作用が増強されることがある。(機序は不明)

禁忌ではないため中止する必要はありませんが、事前に知っておき、注意深く観察しながら投与するようにしましょう。

服薬指導の方法

飲み方の説明

1日2回 朝・夕食後に服用します。

空腹時に服用すると、ティーエスワンの抗腫瘍効果が減弱することが予想されます。必ず食後に服用するよう指導しましょう。(オテラシルの吸収が増加することによりフルオロウラシルのリン酸化を抑制することで効果減弱すると言われている)

副作用の説明

副作用は起こりやすいものを知っておくことはもちろのこと、起こりやすい時期まで把握し、指導する時に伝えることが望ましいです。

食欲不振・吐き気

投与初期に起こりやすくなります。(起こる割合はTS-1単独投与で30%程度)食べられる物を食べ、症状が強く出る場合や長く続く場合は連絡するよう伝えましょう。吐き気が出たらメトクロプラミド、ドンペリドン、デキサメタゾン等で対応します。

下痢

投与開始後1~4週目の比較的早期に起こります。(起こる割合はTS-1単独投与で20%程度)減量・休薬、整腸剤・止瀉剤(タンニン酸アルブミンやロペラミド等)で対応しましょう。

口内炎

投与後2~3週目で起こりやすくなります。(起こる割合はTS-1単独投与で20%程度)起こった場合はうがい薬(アズレンスルホン酸)や丁寧な歯磨きで口の中を清潔に保ちましょうデキサメタゾン等の口腔用軟膏も有用です。また、日常生活でも、こまめな水分摂取で口の中の湿潤を栄養保つことや、栄養状態を保つことも大切です。

骨髄抑制

投与後2週間程度経ってから起こります。白血球(43%)、ヘモグロビン(50%)、好中球(35%)、血小板(35%)が低下しやすくなってきます。

※()内は乳がんTS-1単剤で投与した際Grade1,2の副作用が起こった割合

Grade3以上はTS-1単剤だと滅多に起こりません。

その他

頻度は少ないですが、起こる可能性のある副作用は以下の通りです。

  • 発疹 投与開始直後~2週目
  • 色素沈着 投与2~3週目
  • 味覚障害 時期は不明(機序も不明)
  • 流涙 投与開始~3か月以内

流涙については、軽症であれば投与中止で症状は軽快しますが、中止しても良くならない場合は涙道の狭窄や閉塞が疑われるため、眼科医にコンサルトし外科的処置をしてもらいましょう。

まとめ

  • ティーエスワンは3種類の成分が配合されている(主成分はテガフール
  • 単剤で使用する場合と他の薬剤と併用する場合がある
  • 初回投与量は体表面積と腎機能で決定
  • フェニトイン、ワーファリンと併用注意
  • 副作用は消化器症状(食欲不振・吐き気、下痢)、口内炎、骨髄抑制など殺細胞性抗がん薬特徴的な副作用